岩本健汰インタビュー:CJI、今後のグラップリング界について

岩本健汰インタビュー:CJI、今後のグラップリング界について

GNJポッドキャスト「しみけんの部屋」エピソード1

記事情報

GHJポッドキャスト第1回!

ゲストはこの人以外には考えられない!岩本健汰選手にインタビューをお願いしました。ポッドキャストはYoutube, Spotifyほか各媒体で全編をご視聴いただけます。

インタビュー全編(Youtube/Spotify)

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こちらの記事では、内容を抜粋してお届けします。(聞き手:清水健之介)

CJIの反響

――CJIからちょうど1週間経って、その後反響とかどうですか?

岩本 今までで一番大きい反響はあります。今までだったら試合終わっても結局手元にあんまり何も残らないことが多かったんですけど、やっぱりいい試合ができたこともあって反響はでかいです。すごかったよっていうメッセージがきたり、教則動画を買ったよっていう人も多いし、セミナーやってよみたいなオファーが来たりとか。

――今回は結構岩本さんとしても手応えのある結果になった感じですね

岩本 手応えありますね。もう1個選手として上のステージに立てるみたいなのは思います。今までは試合が終わったとしても、その機会を何かに変えたりっていうことはあんまりしてなかったんですけど、今回はちゃんとやったほうがいいなと思って、セミナーとか教則動画とかも積極的に宣伝して、リターンを得るようにしたいなと思っています。「鉄は熱いうちに打て」というわけじゃないですけど。

――当たり前の話ですけど、今回の試合はブレイクスルーにはなったけど、これまでずっとやってきた活動を通じて世界中でちょっとずつ広がっている岩本さんのファンが今回改めて爆発したみたいな感じだと思うんですよね。

岩本 そうですね、それはありますね。やっぱり僕、2019年からやってきているんで。最初ADCC出た時、自分の中ではこれはもうすごいことだと思ったんですけど、やっぱり一回出たくらいだと周りの評価ってそんなに変わらなくて。コンスタントに2019年からずっと出続けて、今に至るっていうことだと思います。

2019年に一緒にADCCに出ていた選手の中で、今ちゃんと活躍して生き残っているのってひと握りですよね。その時は僕が一番下っ端だったけど、その中でも生き残ってこれたことにちょっと自信があるというか、これはいいことだなと思いました。

カイル・ベイン戦

――ほんとそうだと思いますね。そうしたら、実際の試合の振り返りをちょっとして行きたいんですけど、初日は99キロ以上のカイル・ベインとの試合。ベラルが1本決められてそのあとの対戦でした。この順番はあらかじめラクランから伝えられていたんですか?

岩本 順番はラクランが全部決めましたね。戦略としてはポジションゲームで、僕は判定になったら絶対勝つみたいな信頼をラクランからされていたので最後に選んでもらいました。他の人は結構足関節のゲームをやる人が多いので、判定になった場合勝てるか微妙っていうのもあって。なので、僕が最後の大将戦って感じで置かれました。

本当は、ルーカス・ケナードが全員極めるだろうみたいな感覚だったんですよ、

ラクランもチーム全員も。そこはPJバーチが戦略的に止めたので。さすがだなと思いました。

――チームは岩本さんが勝てば勝てるんじゃないかっていう見込みは出ていった時にはもうあったんですか?

岩本 そうですね、僕が勝てばチームも確実に勝てるっていう感じでしたね。でもやっぱりでかいですね。

――でかかったですよね!結構足も長くて。足といえば足回しが鬱陶しそうでした。蹴り上げられたりもして。

顎へのダメージ

岩本 蹴り上げは大丈夫だったんですけど、フレームが強くて顎をどっかで横から押されたんですよ。そうしたらピキってなって。顎が。当日と次の日ぐらいもあんまり口が開かなくて、ご飯もあまり食べられなくて。

――結構なダメージですね。ラバーガードの時のフレームですかね?

岩本 そうですね、多分それです。頭を使って突っ込んでたのもあるんですけど。耳の奥でピキって鳴ったのが聞こえたんですよ。捻挫ですね。

――デカさ以外に実際に組んでみて驚くこととかはありましたか?

岩本 これは僕の持論ですけど、レスリングできないでかいやつは、倒しやすいです。わざわざ下になってくれるので。でかい奴が下になってもそんなに怖くないんで。上取ればそんなに苦労しないでできるんです。

――何年か前のライアン・エイトキンとの試合もそんな感じでしたよね、相手がわざわざ下になってくれて。でも逆に、レスリングだったらでかい奴相手でもしっかり戦えるっていうことも前(CJIトライアル後に)おっしゃっていたと思うんですけど、でかい相手に対してわりと自信があるっていうことですかね?

――まあぶっちゃけ、77キロ級のほうががレベル高いですからね、重量級よりも。技術的なことで細かいことやってるのってやっぱり77キロとか88キロの選手なんで、ちゃんと技術があればでかさとか体重差とかそんなに気にならないです。僕はミカ・ガルヴァオとかとやってますけど、そっちの試合のほうが恐怖感とかはありましたね。

ニッキー・ロッド戦

――でも逆に見ている側からするとやっぱでかい奴をやっつけたっていうのは派手でいいですね。続いて2試合目は、ニッキー・ロッドとの試合だったんですけど、これは、対戦相手の予想はしていたんですか?

岩本 あれはもうステージに上がるまでわかんなかったです。(アナウンスで)ADCC銀メダリストになった時にもしかして、みたいな感じでした。

――聞いた瞬間はどんな気持ちだったんですか?

岩本 もう何て言うかな…でも誰が来てもって感じの心構えではあったんで、

出撃するかみたいな感じです。

――2日目の試合順も、ラクランは結構考えてるんだろうなと思いましたね。ベラルが怪我しているのもあって、すごい考えたんだろうなと思ったんですけど。

岩本 それがですね、本当は最初にニクロドもしくはビクターヒューゴが出てくるんじゃないかっていう見込みだったんですよ。でもそれがクリスになったんですよね。それは誤算だったんです。ビクター・ヒューゴとニッキー・ロッドがウォーミングアップしてるのを見て、最初はルーカスで取ろうという魂胆だったんですけど、向こうのトラップだったんですよね。

――結局ルーカスは初戦はバーチで、2試合目はウォジックでちょっと持ち味を出しにくい相手でしたよね。そこはBチーム側が仕組んでいたんですね。

岩本 多分ニッキーが考えたんだと思います。裏で、誰を出すかみたいなのは雰囲気で分かるんですよ。別々の部屋なんですけどね。

――ベラルはもう朝の段階でちょっと無理かなという感じだったんですか?

岩本 そうですね、もう全く歩けてなかったです。

チーム戦のルールについて

――今回のCJIとAIGAと今度のPOLARISと全部チーム戦だけどそれぞれルールが違うじゃないですか。CJIとAIGAは比べてみるとどうすか?

岩本 決着があるAIGAのほうがいいんじゃないですかね。判定がちゃんとあったほうが、勝負論があると思います。引き分け狙いじゃなくて、勝負がつくようにしたほうが。サブオンリーだとどうしても。

ちょっと今回のCJIって評判悪いじゃないですか。やっぱりサブオンリーはこうなっちゃうよなって。

――負けないことにシフトすると、どうしても膠着した試合になっていきますよね。サブオンリーとチーム戦の相性はあまり良くないかもしれないですね。チームのためにも負けられないから、より堅い試合になっていくっていう。

2日目のニッキー・ロッドとの試合は終わった瞬間から手応えありましたか?

岩本 今回は実はキャンプがあんまり上手くいってなくて、練習段階での調子はあまり良くなかったんですよ。最初の方は寝られなくて、キャンプ自体も長くなくて。あまり調子が戻らないまま、スパーもそんなに良くないまま終わっちゃって。だからもう試合になったらもう練習とは切り離して考えたんですよ。練習は練習だけど、試合はもう別だから。自分のリミッターを外した状態で闘おうって考えてました。練習のままでやってたら勝てないんで。そういうのもあって、パフォーマンスが良かったのかもしれないですね。

――ニッキー・ロッドとは多分練習でも組んでると思うんですけど、それはどうでしたか?

岩本 1回だけ組んで2回極められました(笑)練習と試合って本当に別で。いい例はジェイ・ロッドで。練習では全然強くないんですよ。波があったりとかして。でも試合だとパフォーマンスいいですよね。そういうのも結構参考にしてますね。

制約と誓約(ハンターハンター)

――その試合に臨む時の気持ちの持っていき方とか、当日のメンタルコントロールとかでは、考えてることあるんですか?

岩本 制約と誓約ってハンターハンターであるじゃないですか。クラピカが幻影旅団に対してだけ強いみたいな。そういう考えですね。試合だったら絶対勝てるっていう考えで臨みました。針が心臓に刺さった状態で。背水の陣です。練習でやられてるし、この練習のまま行ったら絶対負けるんで。背水の陣で行くしかない、という心構えで、やりました。

CJI 1と2、そしてこれからのグラップリング界

――CJIの1と2両方出てる選手ってそんなに多くなくて、その中でも数少ない両方出てる選手の1人として、去年と違ったところとか、何か気づいたこととかはありましたか?

岩本 まあでもやっぱり去年の方がすごかったですよね。もうあれを超えるイベントはないんじゃないかっていうくらい、去年のはすごかったですから。イベントの熱狂度とか盛り上がりとかが。

今後のグラップリングがどうなるんだろうな、みたいな心配は少しありますね。去年はCJIができて、グラップリングの盛り上がりがすごかったですけど、今回のCJIが終わってクレイグも今後はあまりそういうのやらなくなると思うんですよね。今まではクレイグがいたからCJIっていうのができて、クレイグがグラップリング界を気にかけてくれてたから、選手の待遇を良くして、みたいになっていたと思うんですけど、クレイグも引退したしゴードンもいなくなるし、今強い人の上の層がドッと抜けるじゃないですか。今後ってCJI 3とか4って多分ないと思うんですよ。そうなってくるとまたADCCをやるのか?でもCJI見ちゃうともうADCCもちょっと微妙なところがあるじゃないですか。

ADCCのタイトルは欲しいですけど、それを得たところで、今以上に僕の評価が上がるか?って言ったら、それはちょっと疑問です。今、僕に対する評価は、セミナーのオファーとかあったりするけど、それがADCC予選を勝ったり世界でベストスリーに入ったからといって変わるかって言ったらちょっと難しいところだと思います。

――それはクレイグもあちこちで言ってた気がしますね。クレイグ自身もADCC優勝はしてないじゃないですか。だけど、グラップリング業界のアイコンみたいな立ち位置まで上り詰めていたと思うんですよね。それは別にADCC勝ったからじゃなくて、例えばゴードンとの試合だったりとか、そういう面白い試合をやって、試合を含めた発信をしっかりとやって、お客さんがしっかりできたから、セミナーにも人が来るようになってみたいなことを言っていたような気がしますね。

ADCCに勝つっていうことが直接のそういう展開につながるわけではないっていうところはあるかもしれないですね。

岩本 まあ、でもタイトルって一番みんなが覚えてるものなんで。これのチャンピオンになりましたって言ったものしか最終的には覚えてないじゃないですか。だから大事ではあると思うんですけど。昔はADCC優勝したら一生安泰みたいなイメージがあったんですけど、そうではないのかなと思います。まあでも、それは全部に言えると思うんですけどね、格闘技。

――確かに、優勝することはもちろん大事だけど、優勝したからといって安泰ではない。逆に、優勝が全てではないっていうことですかね。

岩本 まあ、かと言ってのプロモーションばっかりやって負けたのによく見せようとしてる人はあんまり好きじゃないですけどね。やっぱりそれをやる権利は得ないとって感じじゃないですかね。

日本のグラップリングの人にはそこに出てきてほしいですね。世に出るきっかけとしてADCCに挑戦してほしいですね。

――そうですよね。グラップリングでいうと特にやっぱりマーケットが日本と日本以外で大きさが極端に違うので、世界の、アメリカだったり、そういう大きい市場の人たちに認知をされないとまずはどうしようもないところだと思うので。さっき岩本さんがおっしゃった権利を得るためには、まずステージに上がらないといけないですよね。

岩本 やっぱり日本だけに留まってほしくないですよね。最終的には海外に出て、目指してる人がもっと増えてきてもいいんじゃないかなと思いますよね。ポーランドはもう世界的に結構認知されてるじゃないですか。オーストラリアもアメリカもどんどん強い人出てきたりするし。世に出るきっかけとして、やっぱりADCCトライアル優勝して、とかADCC出るってなればちょっと名前が上がると思います。

――やっぱりそこの一番わかりやすい切符は ADCCですよね。予選を勝てばとりあえずそのステージに上ることができるっていうのがADCCですからね。例えばWNO出ようと思っても出られないですもんね。そういう意味でADCCっていうのは一つ、大事な大会ですね。

岩本さんもまたトライアルから出るんですか?

岩本 今の自分にとってはちょっと面倒くさいと思っちゃいます。またかよ、みたいな。もう全部優勝してるんですけど、みたいな。あんまりそそられないですね。だけどまあ、多分出ると思いますよ。

アジアオセアニア予選のレベル

――アジアオセアニアの77キロからしても嫌ですよね 岩本さんがずっとそこに立ちはだかっているような感じで。でもそこの立ち位置は変わってきてますよね、前回もちょっとそんな感じはあったと思うんですけど。

岩本 そうですね、勝って当たり前みたいな感じです。

やっぱりそう考えると、オーストラリア凄いレベル高いですよね。予選で77キロ級のオーストラリア/アジアの全員出るんだとしたらすごいレベル高いですよね。リーバイもいるし、僕もいるし、ジョセフもいるし。88キロ級だったらアイザック・ミッシェルとかルーカス・ケナードとか、トップレベルの選手が揃ってるんで。これで予選、もし全員出るとしたら、予選のレベルだとアメリカ予選よりも難しいかもしれないです。ブラジル予選の優勝者にも僕は勝ってるし、デクランも(先日の)ヨーロッパ予選優勝したじゃないですか。そのデクランもアジアに前は出てたし。ジョセフもヨーロッパ予選優勝してるし。リーバイはCJI2位だし。結構もう全員集結したらすごいレベルの高さですよね。

――日本は柔術と比べてもグラップリングをやってる人はそんなに多くない。さらにその柔術自体も日本全体の人口を考えたらまだまだ人数増えると思うんですよね。

岩本 まあグラップリングも面白いですからね。グラップリングでレスリングやらなきゃいけないみたいな認識持ってる人もいるかもしれないですけど、全然なくてもできますよね。まあレスリングも楽しいですけどね。

POLARIS, その次の試合、セミナー、セミナー、セミナー

――岩本さんは次はPOLARISが9月12日にあると思うんですけど、その後も試合があるんですね?

岩本 その1週間後も試合があります。それはサルディニアです。イタリアのサルディニア島です。それはトーナメントで勝ったら1万ユーロ。でファイトマネーも出る。

――もうじゃあ連戦連戦ですね

岩本 サルディニア終わったら今度はピサに行きます。ピサの斜塔のピサ。で、そこでジムに行って1日セミナーをやる感じですね。で、その週末にはエストニアに行きます。で、エストニア終わったら今度はドイツへ。それが終わったら今度スペイン。で、そのスペインが終わったら、その次の週にバルセロナに移ります。

これもCJIが終わってオファーが来たやつですね。2019年にLet’s BJJの藤原さんに、鉄は熱いうちに打てって言われたんで。

――ジョセフもセミナーですごい儲けてそうですね。

岩本 大事なのは、本物であることが大事です。ジョセフはもう正真正銘の本物じゃないですか。本物であることが証明して、クレデンシャルがある上で、その技術とかを教えるから 人が集まったりとか教則が売れたりとかするわけで。自分がまだ偽物なのに人を騙すような形で物を売ったりするのはあんまり良くないですよね。

――最後、POLARISに向けた意気込みなどはありますか?

岩本 ポラリスは、勝っても賞金がないらしいんで、勝敗は別にあんまり正直そんなに気にしてないです。自分のパフォーマンスを出して、試合して勝ってってできればいいかなって。チームメイトで僕がちゃんと友達なのはイゴールとルーカス・ケナードなんで、僕とルーカスとイゴールで、勝とうって感じですね。チームは特に、どうでもいいって言ったらあれですけどあんまり頭にはないですね。

――相手で注目してる選手とかはいますか?

岩本 一人めちゃくちゃ強い人がいますね。

――チャールズ・ネグロモンテ?

岩本 その人が強いらしいです。アイザックに勝ってますね、ADCCで。膝十字で。その人が一番強いと思います。他の人は全然、知らないですね。

――じゃあまあそこも対戦があれば楽しみですね

岩本 ちょっと休みたいですけどね、実は。CJIが決まる前に入れた試合なんで、やるしかないですね。仕事の報酬は仕事って青木さんが言ってますからね。仕事の報酬は仕事だと思って、がんばります。

――今日は岩本選手お越しいただいて、 CJIの振り返りとか、グラップリングのこと全般もろもろお話を伺ってまいりました。岩本選手ありがとうございました!

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