柔術家の皆さん、今年一年の練習お疲れ様でした!
道着の襟が擦り切れ、指の関節が少し太くなり、道場へ向かう足取りが重い日も軽やかな日もあったことでしょう。
年末という節目は、単にカレンダーをめくるだけの時間ではありません。
柔術という、答えのない巨大なパズルに挑み続ける私たちにとって、自分自身を客観的に見つめ直し、次なる進化への設計図を描くための貴重な時間です。
今回は、来年を最高の状態で迎えるための振り返りと目標設定の技術について向き合ってみませんか?
技術の棚卸し:成長の解像度を上げる
柔術は一朝一夕で身につくものではないですよね。
毎日マットに汗を流していても、自分が強くなっている実感を持つことは非常に困難です。
昨日タップを奪った相手に、今日はあっさりとパスを許してしまう。
そんな日常の繰り返しの中で、私たちは時に、自分は成長していないのではないかという錯覚に陥ります。
だからこそ、1年というスパンで技術の解像度を確かめる作業が必要なのです。
まずは、今年無意識にできるようになった動きや、スパーリングで成功率が上がった技を具体的に書き出してみましょう。
以前はエビの動作ひとつとってもぎこちなかったのが、今では流れるようにガードを作れるようになっていないでしょうか。
あるいは、特定のサブミッションの入り口が以前より明確に見えてきてはいないでしょうか。
一方で、いつも同じポジションで攻めあぐねている詰まりどころを探ることも重要です。
ハーフガードで止められる、トップを取っても安定しない、といった具体的な壁を特定してください。
成功と課題をセットで抽出することで、来年磨くべき刀の形が鮮明に見えてきます。
この作業は、霧の中に隠れて見えなくなっている成長の足跡を再確認し、進むべき方角を修正する重要なプロセスです。
フィジカルと生活習慣の点検:マット外の戦い
柔術はマットの上だけで完結するものではありません。
食事、睡眠、補強運動といったマット外の習慣が、練習の質を直接的に左右します。
今年、自分の身体はどう変化したでしょうか。
練習頻度は適切だったか、怪我との付き合い方はどうだったかを冷静に振り返ってください。
たとえば、スタミナ不足を感じたのであれば、それは純粋な心肺機能の問題なのか、それとも無駄な力みによるエネルギーロスなのかを分析する必要があります。
また、体重管理も重要な要素です。
試合に出る方はもちろん、趣味として楽しむ方にとっても、自分のベストな動ける身体を知ることは、柔術を長く健康に続けるための必須条件です。
理想のパフォーマンスから逆算して、今の自分のコンディションに合格点を出せるかを判断しましょう。
特定の部位の筋力不足や、疲労が抜けにくいといった負の側面を正直に認めることが、来年の動ける身体を作る第一歩となります。
身体は柔術における唯一の資本であり、そのメンテナンスを怠ることは技術向上を阻む最大の要因になりかねません。
マインドセット:帯の重みとモチベーションの源泉
帯の色が変わる、あるいはその帯で過ごす時間が長くなるにつれ、道場での立ち振る舞いや練習への向き合い方も自然と変化します。
自分が今、何をモチベーションにマットに立っているのかを再確認してください。
昇帯の喜び、試合での勝利、あるいは単に仲間とのスパーリングで汗を流す充実感。
自分の原動力を正しく理解している人は、必ず訪れる停滞期や怪我の時期すらも、柔術という長い旅の一部として受け入れることができます。
特に帯が上がると、自分自身の練習だけでなく、周囲への影響も考えるようになります。
後輩に教えることで自分の理解が深まることもあれば、格上の相手に挑み続ける勇気が道場の活気を作ることもあります。
悔しさも喜びも、すべては次のステージへ向かうためのエネルギーです。
今年の自分の精神状態はどうでしたか?
来年はどのような心構えで臨みたいですか?
その内面的な変化を言語化することで、柔術家としての芯がより強固なものになります。
来年の目標設定:進化を加速させる三つの約束
振り返りが終わったら、次は未来の話です。
目標を立てる際は、単なる願望ではなく、具体的な仕組みにまで落とし込むことが重要です。
以下の三つの指針を意識して、来年のプランを立ててみてください。
テーマの絞り込みと長期的な反復
あれもこれもと最新の技に手を出すのではなく、特定のガードやパスを数ヶ月単位、あるいは一年を通してやり抜く覚悟を持ちましょう。
流行の技術を追いかけるよりも、一つの形を徹底的に深掘りする方が、結果として柔術全体の理解度を底上げしてくれます。
技術の言語化
スパーリングでなんとなく決まってしまう技を、論理的に説明できる自分の武器へと昇華させてください。
なぜその角度で入るのか、なぜ相手は動けないのか。これらを言葉にできるレベルまで分解することで、技の再現性は飛躍的に高まります。
環境と習慣の確保
仕事や家庭との兼ね合いの中で、週に何回マットに立つのかをあらかじめ決めておきましょう。
根性に頼るのではなく、生活の一部として柔術を組み込む仕組み作りこそが、上達への唯一の特急券です。
ケーススタディ:筆者の振り返りと来年への誓い
ここまでのメソッドを具体化するため、私自身の1年を例としてまとめます。振り返りの項目を埋める際の参考にしてみてください。
技術の収穫と課題
良かった点:足関節の克服
足関節への苦手意識を克服し、フットロックが武器になり始めました。
また、ガードリテンションの強化で粘り強さが増したと感じています。
課題:キャンピングポジションからのパスガード
1年くらいやっては諦めを繰り返しているキャンピングポジション。
形は作れるのですが、そこから崩し切る成功率が著しく低いのが現状です。
フィジカルの現状
良かった点:動ける身体に!減量成功
筋肉量を維持したまま9kgの減量に成功し、ランニングにより持久力が向上しました。
AIを活用したカロリートラッキングなどが助けになりました。
課題:せっかく痩せたのにリバウンド&上半身の弱さ
減量後に3kgリバウンドしてしまいました。
また、下半身の強さに比べて上半身の筋力不足が顕著です。
メンタル・試合の総括
良かった点:マインドの変化
紫帯になったことで、道場の手本となるべきだという自覚と責任感が芽生えました。
少しずつではありますが、アドバイスを求められたときに適切な回答がデキるようになってきたような気がします。
課題:試合の結果
思ったような結果が出ず、苦しい1年でした。
この悔しさをどう来年に繋げるかが最大のテーマです。
来年の具体的な抱負
練習環境:練習時間を増やす
平日の時間を調整し、週3~4日の練習頻度を必ず確保します。
技術の追求:トップコントロール
パスガードのプレッシャーを使いこなせるようになります。
単に技をかけるだけでなく、人に教えられるレベルまで論理的に分解・習得します。
新たな挑戦:ノーギの試合にも再挑戦
ノーギの試合にエントリーし、道着ありとは異なる技術体系や経験を積み上げます。
2年前にアダルトの試合にでたボコボコにされたトラウマを払拭したいです。
継続の誓い:テクニックの反復練習
クラスごとにコロコロ変えず、流行に流されず、決めたテーマを長期間反復して自分のスタイルを確固たるものにします。
打ち込みの時間も十分に確保したいと思っています。
柔術を楽しむために自分と向き合おう
柔術において、一足飛びに強くなる魔法はありません。
最短距離で強くなる方法はあっても、それは地道な反復と自己分析の積み重ねの先にしか存在しません。
来年も、思い通りにいかない日は必ずやってきます。
自分の才能に絶望する日や、身体が動かないことに苛立つ日もあるでしょう。
しかし、そんな日々も含めて柔術という素晴らしい文化です。
1年の終わりに道着を畳みながら、まずは自分にこう声をかけてあげてください。
よく続けてきた。そして、来年はもっと面白くなる。
自分だけの設計図を胸に、また来年マットの上で会いましょう。
さらに解像度の上がった景色を、共に楽しみましょう。



