
ベイビー・シャークってどんな選手?
12月6日米倉大貴とOne Championshipで対戦- ADCC2連覇、ディエゴ・パトとのライバル関係
記事情報
12月6日にバンコクにて開催されるOne Championshipにて米倉大貴と対戦するベイビー・シャークことディオゴ・ヘイズ(Diogo Reis)。2022、2024のADCC66キロ級を連覇、柔術においても数々の世界タイトルを獲得するなど軽量級における世界最強グラップラーの1人である彼のこれまでの歩みについて、特にグラップリングでの実績に焦点を当てて振り返る。
略歴
ベイビー・シャークことディオゴ・ヘイズは2002年3月20日生まれ。この記事を書いている時点でまだ23歳。しかし彼は現役の軽量級グラップラーの中ではすでに誰よりも輝かしい実績を積み上げている。
ブラジル第7の都市、マナウスで生まれ育った彼は、ミカ・ガルヴァオ(Mica Galvao)やファブリシオ・アンドレイ(Fabricio Andrey)らとともにミカの父親メルキ・ガルヴァオの元で柔術、ルタリブレ(ブラジリアン・キャッチレスリング)、レスリングなどのトレーニングを積み、2020年にメルキよりブラジリアン柔術の黒帯を授与されている。
道着の柔術でもIBJJFワールド2位、パン選手権やヨーロピアン選手権優勝など多くの実績を残しているが、特にグラップリングにおいてはADCC世界選手権の66キロ級を2022、2024と2連覇するなど世界最強の1人に挙げられるグラップラーである。
Flo Grapplingが製作した”The Ups & Downs Of The Manaus Boys”という動画では、マナウスという都市の様子や彼らがトレーニングを積むジムの様子を垣間見ることができる。メルキのジムは全寮制のような形で運営されており、子どもを含む選手たちは平日ここで練習を積み、週末には親に会いに家に帰るということを話している。メルキのジムはドリームアーツやファイトスポーツなど名前と所属先を変えつつも、同じ場所で同じようにずっと運営をしていることが窺える。
個人的にはしっかりレスリング・シューズを履いてレスリングのトレーニングをしている場面が印象的で、柔術の一環としてだけでなくしっかりレスリングのトレーニングを積んでいることが感じられる一場面だった。
VS ノア・ワイアット(Noah Wyatt /Third Coast Grappling)
ベイビー・シャークのグラップリングにおける確認できる限りで、後述する試合中の負傷による敗退を除いて、最後の(そして黒帯においては唯一の)一本負けは2021年6月20日、ノア・ワイアットという選手に対して記録されている。フォルスリープからエントリーしたサドルポジションのインサイドヒールフックで負けており、映像で見るとベイビーシャークが初めからなんでも強かったわけではないことを実感させられる。相手選手のその後の知名度ややられ方を踏まえて、この次の年にADCCで優勝していることを考えるとその進化のスピードの速さに驚かされる。
vs ガブリエル・ソウザ(Gabriel Souza /2022 ADCC決勝) - 初のADCC制覇
トライアルの決勝でディエゴ・パトを破り、一回戦で当時のポラリスのチャンピオン、アシュレー・ウィリアムズ(Ashley Williams)、二回戦でトレーニングパートナーであり兄弟のような存在のファブリシオ、三回戦でジョシュ・シスネロス(Josh Cisneros)を破ったベイビー・シャークは決勝でガブリエル・ソウザと対戦。一進一退の攻防の末にバックテイクに成功したベイビー・シャークが勝利して初のADCC制覇を達成している。
特に決勝戦の攻防ではレスリング、足関の攻防、ガードワーク、そしてガードパスとグラップリングのあらゆる局面で攻防が展開されており、弱点のないベイビーシャークのゲームを垣間見ることができる。また、とんでもなく派手な動きはないものの常に動きのある試合を展開しており見ていて飽きないスタイル・特長も見てとることができる。また、ファブリシオとの試合では判定に有利となる展開を作るためにあえて相手を亀から立たせて再度スタンドバックを取り返すなどマットIQの高さも示した。
Vs ディエゴ・パト・オリベイラ(Diego “Pato” Oliveira/WNO21)- グラップリングでの最後の敗戦
ベイビーシャークの歴史を振り返る上で、ディエゴ・パトとのライバル関係を無視して語ることはできない。ディエゴ・パトはアグレッシブに一本を狙うスタイルが特長の軽量級最強グラップラーの1人である。彼もベイビーシャークらと同様にマナウスの出身だが、マナウスに残りトレーニングを積んだ彼らとは違い若い頃にサンパウロへ出てシセロ・コスタの元に入門、現在はアメリカのAOJ(Art of Jiujitsu)に所属している。パトとベイビー・シャークは先述のトライアル決勝の他にもIBJJFワールドやパンなど数多くの大会の決勝で顔を合わせている。
2023年に開催されたWNO(Who’s No One)で実施された今試合においてはベイビーシャークが試合中の負傷によりリタイア、ディエゴ・パトがWNOのチャンピオンになっている。ベイビーシャークのグラップリングにおける敗戦は確認できる限りではこれが最後となっている。
vs ディエゴ・パト・オリベイラ(2024 ADCC決勝)– パトへのリベンジとADCC連覇
チャンピオンとして挑んだ2024年のADCCにおいて、ベイビーシャークは一回戦でアジア・オセアニア予選の勝者シュウ・ホァイチンを撃破。続けてファブリシオ、シスネロスとの再戦をそれぞれ勝利し、決勝戦にこぎつけた。一方、逆の山ではディエゴ・パトがアシュレー・ウィリアムス、イーサン・クラレンスタイン(Ethan Crelinsten)、オーウェン・ジョーンズ(Owen Jones)らを撃破し決勝に進出した。
試合は序盤にノースサウスに回ったベイビーシャークに対してパトがKガードからクラブライドを経由しスイープ、その後ハーフガードからガードパスを成功させる。ベイビーシャークがダブルガードを選択すると、パトはフットロック、ニーバーなどのアテンプト、バックテイクなど攻め立てたが、決め切ることはできず。ヒールフックから逃げたベイビーシャークが立ち/座りの攻防に移行すると今度はガードパスでパトを攻め立てる攻防に。パトもカウンターのレッグエントリーなどを試みたが、最終的にはベイビーシャークがボディロックからわずかに背中を見せたパトの首をとり肩固めの形を作り、そのまま決め切って決着。ベイビーシャークがADCC2連覇を達成した。
なお、パトとベイビーシャークはIBJJFワールドの決勝で再戦。こちらはパトがレフェリー判定で勝利を収めている。
vs 石黒翔也(2025 One Championship)
2025年にはカルぺ・ディエムの石黒翔也とOne Championshipで対戦。序盤は足を放り投げるパスガードや上からのエスティマロックなどやや強引な攻めを見せるが、途中からヘッドクオーターからプレッシャーをかけると、グリップを作りそのままキムラにとびこみ洗濯バサミの体勢へ。逃げる石黒に対してキムラを決め切り勝利した。
なお、ジオゴヘイズはこの試合の計量を失敗しており、試合は61.2kg(フライ級)から63.2kgのキャッチウェイトに変更されて実施されている。
終わりに
本稿ではベイビーシャークことジオゴ・ヘイズの黒帯昇格以降の歩みをグラップリングでの戦績を中心に振り返った。12月6日のOne Championshipではこの最強グラップラーを相手に米倉大貴がどのような試合を見せるのか、目が離せない。
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