なぜ、柔術家はグラップリングに踏み出せないのか
柔術の奥深さに魅了され、日々の練習に励む皆さん。充実したマットライフを送っていらっしゃいますか?
柔術界隈では「ノーギ」とも呼ばれるグラップリングは、近年人気が高まっていますが、道衣ありの柔術に専念し、道衣なしの練習にはまだ手を出していない、という方も少なくないかもしれません。
グラップリングに興味はあっても、以下のような漠然とした不安や誤解が、一歩を踏み出すのをためらわせているのではないでしょうか?
- MMA選手の練習というイメージが強くて、レベルが高すぎるのでは?
- 道衣がない分、技術よりフィジカルやスピード重視で、野蛮で痛そう…
- 肌の密着が多くなるのが、正直少し気になる…
もしあなたがそう感じているなら、ご安心ください。私自身の経験から言えるのは、これらの心配は、イメージが先行しているだけだということです。
グラップリングは、あなたの柔術を次のレベルに引き上げる最高のスパイスであり、最短ルートです。
この記事では、柔術経験者であるあなたにこそ、グラップリングを始めるべき理由と、私が実際に体験したポジティブな変化を、包み隠さずお話しします。
不安を払拭!グラップリングに対する誤解を解く
まず、グラップリング未経験者の方が抱くであろう、最も大きな二つの心配事について、実情をお伝えします。
1. レベルや雰囲気:野蛮ではなく柔術の延長
グラップリングは痛い、野蛮、フィジカル勝負という印象をお持ちの方も多いと思います。
しかし、私が通っている一般的な柔術アカデミーのノーギクラスは、そのイメージとは大きく異なります。
実際は、柔術と同じように、安全性を重視した技術練習が中心です。
道衣を掴めないというルールの違いから、攻防のスピード感は増しますが、それはフィジカル任せではなく、「体の使い方やフレームの正確さ」がより厳密に求められるということなのです。
柔術の延長線上にある、技術と戦術が詰まった非常に奥深い競技。
そう捉えれば、心のハードルはグッと下がるはずです。
2. 肌の密着:「楽しさ」が不安を上回る
道衣を着ている柔術と比較して、ラッシュガードと短パンというスタイルでは、肌が密着する場面が増えるのは事実です。
これに対して懸念を持つ方もいるでしょう。
しかし、私の実体験として断言できます。一度グラップリングの技の攻防の楽しさにハマってしまうと、その集中力の高さから、肌の密着具合はほとんど気にならなくなります。
むしろ、道衣を介さずに相手の動きや力の方向をダイレクトに感じ取れることが、純粋な身体の仕組みや技術体系との対話として楽しくなってきます。
グラップリングがあなたの柔術を飛躍させる5つの理由
では、グラップリングを始めることが、具体的にあなたの柔術スキルにどのような相乗効果をもたらすのでしょうか。
1. ポジションへの意識が圧倒的に高まり、守りが固くなる
道衣のグリップに頼れないグラップリングでは、一度良いポジションを失うと、柔術以上にリカバリーが難しくなります。
柔術のように袖を掴んでどうにか耐えるという手段が使えないからです。
この環境が、このポジションを絶対に失わないという強い意識を芽生えさせます。
- パスガード時の体の密着度
- マウントやバックポジションでの正確な体重のかけ方
- 一瞬の隙も見せないフレームの組み方
これらポジションに関する精度と意識が徹底的に鍛えられ、柔術に戻った際も、絶対に崩れないディフェンス力を身につけることができます。
2. ガードリテンション技術の深化
これは私自身の実体験から強く言える、最も大きなメリットです。
グラップリングで練習を積むことで、ガードリテンションの技術が格段に上がったと実感しています。
柔術の練習では無意識に頼っていた「帯や襟、袖を掴んで引き付ける力」を失うことで、真の意味で自分の体だけ」でガードを維持する方法を学ぶからです。
- フレームの正確な入れ方
- 足のフックの鋭さと強度
- 体幹を使った距離管理
これらのノーギで培ったスキルは、柔術の試合で相手がグリップを切ってきた後の立て直しや、相手の力強いプレッシャーに対抗する本質的なフレームワークとして、絶大な効果を発揮します。
3. 足関節への恐怖心克服と「潜る技」のバリエーション増加
グラップリングの大きな魅力の一つは、柔術では帯や年齢によって禁止されている足関節の攻防が解禁されることです。
足関節技の攻撃と防御の奥深さを知る過程で、足を触られることへの過度な恐怖心が薄れます。
これは、柔術においても積極的に足を絡めるオフェンス(デラヒーバ、リバースデラヒーバなど)を仕掛けやすくなるというメリットにつながります。
また、足を掴みに行くムーブメントや、ベリンボロなどの潜る系(アンダーフック系)の技についても、グラップリングではより多様なセットアップを試すことができます。
足関節を起点とした潜り技のバリエーションが増え、ガードからの攻撃の幅が一気に広がります。
4. レスリングとスクランブルの攻防が飛躍的に向上する
道着のグリップがないグラップリングでは、体幹の強さ、バランス、そして相手との密着といった、柔術の基本となるフィジカルスキルがよりダイレクトに要求されます。
結果として、柔術でも重要なテイクダウンやスクランブルなどの立ってから寝るまでの攻防が上達し、柔術の試合の序盤を優位に進める大きな武器になります。
5. 持ち物と後片付けが圧倒的に楽になる
柔術家にとって少なからず面倒な道着の手入れ。グラップリングなら、その悩みは解消です。
必要なのは、Tシャツ(またはラッシュガード)と短パン(またはスパッツ)だけ。荷物も少なく、練習後の洗濯物もすぐに乾くので、週末の練習などにも気軽に「もう一回」参加するハードルが下がります。
まとめ:道衣を脱いで、新しい自分を発見しよう
グラップリングは、道着という鎧を脱ぎ捨て、より本質的な身体操作と技術を追求する、柔術家にとって最高の学びの場です。
✅️道衣に頼れないからこそ、ガードリテンションやポジション精度が向上する。
✅️足関節が解禁されることで、攻防の幅が広がり、恐怖心がなくなる。
✅️スピード感と技の連鎖が、純粋に楽しいと感じさせてくれる。
柔術で培ったあなたのスキルは、グラップリングの世界ですぐに活かせます。この楽しすぎる攻防と、柔術への絶大な相乗効果を、ぜひ一度体験してみてください。
きっと、最高に楽しめるはず!
筆者はこのコラムを通じてグラップリングを始めるというハードルを超えて競技を楽しむ女性が増えることを切に願っています!
一緒に練習しましょう!!!



