GNJポッドキャスト第2回は寿柔術の寒河江さんと一緒にCJI2の振り返りを行いました。
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全編(Youtube/Spotify)
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こちらの記事では、内容を抜粋してお届けします。(聞き手:清水健之介)
初日の感想
――今日は寿柔術の寒河江さんをお招きしてCJI2の振り返りを二人でやっていけたらなと思います。寒河江さん、よろしくお願いします。
寒河江 お願いします。
――早速なんですけど、ピックアップしたい試合を1個ずつ見ていけたらなと思います。初日から構図としてレッグロッカーが相手を決められるかどうかみたいな試合が多くて、まず盛り上がったのは、テイラー・ピアマンとジャン・カルロ・ボドニの試合でした。
ピアマンが攻めあぐねているところからいいエントリーをして、ああでもこれも逃げられたかなと思ったらいい具合にかかって、おっと思ったらタップしたかしないかみたいなことになったんですけど、寒河江さんの感想はいかがでしたか?
寒河江 そうですね、ピアマンさんはニーシールドのハーフとかハーフバタフライとかを使いつつ、ラッソーで相手を止めて、そこからファルスリープを狙うみたいなスタイルでやっていて、序盤はボドニさんも結構防いでいたんですけど、最後2分半くらいのところで捕まえて、ファルスリープみたいな形で入りつつサドルではなくアウトサイドアシに入って、そこから外掛けをしてそこから外ヒールみたいな感じでしたね。
テイラーさんの足の仕掛けとかもうまかったんですけど、作る前もガードも体格差ある中で上手くやってるなっていう印象がありました。ラッソーをうまく使って止めていましたね。
――ADCCに比べるとレッグロッカーが最初からもう思い切ってもう座って勝負をする試合が目立ちました。
寒河江 そうですね。8分しかないのでレスリングで時間が潰れると得意な展開に持っていけないですからね。
――ボドニのタップはどう思いますか?
寒河江 まあ、あの感じでされたらタップかなって思っちゃいますよね。もうここで決めないとと思ってるんで、タップかなと思ったら離しちゃうと思います。敏感になってるというか、かけてる側もここでタップしてくれと思ってるはずなので。あれはタップとられても仕方ないと思います。
――ボドニはそのあとブーイングもされてました。そのテイラーも次の試合でドリアンにボコボコにされてましたね。ドリアンはどう思いますか?
寒河江 ドリアンさんはカーディオがとにかく半端ないじゃないですね。動くだけじゃなくて、パスも多彩になってましたね。よく使ってたのはアンダーフックを取るんじゃなくて、Cグリップでまとめて、頭の方に飛んでクロスフェイスではなく頭を抱えてノースサウスに回るようなパスを使ってましたね。
――ずっと動き続けてますよね。マラソンじゃないですよね。ずっと100メートルを走ってるような感じで。
寒河江 そうですね。あれは疲れるだろうなって思います。パスはめっちゃ強いんですけど、サブミッションに繋げるまではまだ多分そんなに、もちろんできるとは思うんですけど、まだ強くないっていうのもあって、アレだけパスされても極められるところまでは行かなかったのかなと思いました。
あと他の試合もなんですけどスマザーを使って上から顔を思い切り押さえるのは嫌だなと思いましたね。
テイラーさんも最初はラッソーとかフレームをうまく使って、オモプラッタに入ってもう少しでアームバー取れそうだったりして、上手だなと思いました。
――チームアメリカとニューウェーブの試合でいうと寒河江さんはミカ・ガルヴァオとデアンドレ・コービーの試合も注目されていました。
寒河江 個人的にデアンドレ選手が結構好きなのもあって面白かったです。デアンドレ選手は普段もう1個下の階級でやってて、今回は身体を大きくしてきたんですけど、当日はミカの方がやっぱり大きい感じがしましたね。それでも負けない感じの試合をしてて、すごく面白かったです。
――ミカは結構壁使うのが上手かったような気がしました。
寒河江 デアンドレの方が純粋なレスリング技術だけでいうと上手い気がしました。ミカは柔術と組み合わせるような感じで、下からハーフみたいな形で返したりと展開を作るのがうまかったです。あとはデアンドレが一回惜しかったのは、下からリバデラでミカのラウドラッグに合わせて潜って入ってヒールを取りかけたところがうまかったですね。
――続いて、ATOSとヨーロッパの試合がありました。ヨーロッパの方はマテウス・シュジンスキーの影響なのか、ポーランドとかそっちの方のレッグロッカーの選手が結構目立っていました。寒河江さんは注目試合としてオーウェンとカイナンの試合を挙げられていました。重量級最強格の1人、カイナンに66キロ級のオーウェン・ジョーンズが挑んだ試合でしたが、寒河江さんはどうご覧になられましたか?
寒河江 そうですね、オーウェンが取りかけたとかではないんですけど、ガードがすごいうまくてカイナンの攻めを防いでいるのが印象的でした。自分の身体を、デラヒーバ側に頭を向けるのか、ハーフ側に向けるのか、など位置を調整していたり、後はデラヒーバ、リバデラなどの膝を内側に入れてカイナンの前に差し込むことで、ニーカットで前に出られないように止めながらガードを作っていたりしたのがうまかったと思います。
後は、パスをされないようにバタフライフックを入れる時に、普通は外側に開いて入れることが多いのですが、あえて内側に閉じることでマウント方向のニーカットを防いでいるのも、ディフェンシブだけど印象的でした。
――もちろん頑張ってやられないようにディフェンスしてるのは見て取れましたが、その中でも耐えるだけじゃなくて、そういった技術を使ってディフェンスをしたっていうところですね。ちょっと見直してみようと思いました。
寒河江 体格差があって届かなかったのかあえてなのかわからないですが、通常相手の股関節に置くキーマスターの足をお腹の前に置くようにしていたのも相手を止める効果があって面白かったです。
――やっぱり大きい選手は小さめの選手の多彩なガードに対して攻めあぐねることが多かったような気もしますね。同じようなガードを仮に使ってたとしても、重心のかかる位置だったりとか、相手の胴体がある場所だったりとかも変わってくるから、ちょっとやりづらいんでしょうね。
寒河江 見ているとやっぱり体格差がある時はパスをして上から決めるよりはバックを取って決めることの方が多かったように思います。プレッシャーかけて亀の体勢にさせてバックを取るような。でかい選手のバックは強いなと思いましたね。
――続いてチームオーストラリア・アジアと10th Planetの試合では岩本選手が出場しました。その前の試合でベラル選手に対してカイル・ベインがヒールで一本勝ちをしていたのですが、岩本選手はしっかり引き分けを取りました。判定の結果はわからないですが、見ている印象だと勝ってのではないかと思います。そのあと、デイジーフレッシュとBチームの試合もありましたが、初日は女性トーナメントがすごい盛り上がりました。
それまではちょっと膠着した試合が多くて、ちょっと爆発しきらないような印象でしたが、女性トーナメントは最後にめちゃくちゃ面白い試合を2試合やって良かったなと思います。
最初はヘレナ選手とアデル選手の試合でした。
寒河江 そうですね、ヘレナさんの方が何回かアオキロックにエントリーをしていて、アデルさんもしっかりずらしてたから大丈夫だったんだろうとは思うのですが、その形になっている時間や回数が多かったのが悪印象だったのかなと思います。決まってない時は早めにそれを切って、次の攻防に繋げるような動きが多かったらおそらく判定は逆だったんじゃないでしょうか。
――あのヘレナさんの、上から攻めてながら座り込んで足にエントリーするような動きはどう思いますか?
寒河江 IBJJFなどのポイントゲームではあんまりやらない動きだと思います。それを見せながらパスに繋げていくようなことはあるかもしれないけど、がっつり足をとりにいくような動きだったので、そういう動きをするんだっていうのはちょっと意外でした。
――逆にいうとルールをしっかり意識した動きだったと言えそうですね。
寒河江 そうですね。パスをずっと狙って膠着させるよりは、そっちの方がいいんじゃないかっていう判断でしょうね。
――そうですね、結果的にはそういう戦術的な部分が生きて、手数の差でヘレナさんの勝利となりました。
寒河江 アデルさんのハーフなどから煽ってワンレッグに入るみたいな動きとかはすごい上手くて、それをヘレナさんも上からまた足で切り返していたりしましたが、チョイバーへのエントリーなども良かったです。
最初の試合が始まってすぐの時、下から腕抱えてミーアロックっぽい形を作れそうかなという場面がありましたが、その後からヘレナさんも警戒して、あんまり腕差さないで、シーグリップとかで止めたり手首までかけて肘も下の方に置くような形にしていました。
――次の試合もまた実績のあるアナ・カロリーナ・ヴィエイラ選手とサラ・ガルヴァオ選手の試合でした。アナ選手はADCCで優勝経験がある選手。サラ選手はアンドレ・ガルヴァオの娘で19歳の選手です。
この試合も第2ラウンドまではほぼ互角でした。
寒河江 1ラウンド目はアナ選手が結構押してる感じかなと思ったんですけど、2ラウンド目かあはサラ選手が圧倒していました。
――2ラウンド目以降はエネルギーの差があったような気がしました2ラウンド目のテイクダウンというか、ピットを登ったところからからぶん投げたような場面があったと思うのですが、そこからもう何かずっと流れがサラ選手の方に行ってました。
寒河江 そうですね、あそこからもうバックを取って後ろ三角に入れたりなど、サラ選手の側はちょっとそこで多分いけるぞっていう気持ちの何かが入ったのかもしれないですね。
2日目の感想
――2日目は第1試合がATOSとニューウェーブの試合ですね。自分は特にディエゴ・パトとルーク・グリフィスの試合が面白かったです。パトはちょっと初日の試合はちょっと不完全燃焼だったのかなと思っていたのですが、相手が超重量級のグリフィスってことで、結構アグレッシブに攻めて、めちゃくちゃいい形も作って、でも取り切れなかったところから逆転されて、一本取られちゃったっていう感じだったと思うんですけど。初日は結構軽量級の選手が防御に徹した試合が多かったのですが、2日目は攻め込んでやられてしまうという試合がいくつかありました。ただ、そういう試合こそ盛り上がったなっていう気もするんですよね。
寒河江 軽い方がやっぱりでかい人と当たったら基本的には不利ですよね。でもアグレッシブに攻めてくるとは見てる方も面白いし、もし取ったらすごい盛り上がりますよね。パトはリバデラから足回してラッソーでスイープをとったのがすごかったですね。
――そのあと、やられてしまったパトの仇を取りに出てきたペナがグリフィスから1本取って、そしたら今度はそのペナがドリアンにボコボコにやられてました。
寒河江 疲れもあると思うんですが、それでも体格差がある中でテイクダウンやパスを連発するのはすごいですよね。変わらず無尽蔵のスタミナでしたし、パスをしたらスマザーもするしですごかったです。よくやるなと思いました。
――全員に対して同じことやって、全員に対して同じ結果を出すっていうのはすごいですよね。
寒河江 パスもやっぱり得意のノースサウスに回るパスが良かったですね。
――次の試合、ボドニが一本勝ちしてニューウェーブは決勝進出となりました。
その次のBチームとオーストラリア・アジアの試合では、1試合目がクリス・ウォジックとルーカス・ケナードの試合でした。2人ともレッグロック使いで、どちらも決め手には欠ける形になってしまいました。
寒河江 ルーカス・ケナードはラクランがよくやってるような形のエントリーなどもありましたが取り切ることはできなかったですね。お互いに足の取り合いになるとわかっている同士だとなかなか取るのは難しいですね。
――次の試合はニッキー・ロッドが出てきて、オーストラリアの側は誰かなと思ったら、岩本選手が登場しました。この試合は本当にやばかったですね。
寒河江 ニッキー・ロッドのガブリは本当に強いだろうと思うのですが、そこでアナコンダやダースは取らせずに、バックにも回らせずに凌いでいたのが印象的でした。岩本さんは日本でもレスリングの練習を大学に行ったりしてすごくやっているし、大き人とやり慣れてるところもあるのかなと思いました。
――最後の方にもあったと思うんですけど、エスケープして相手が立ってきたところですぐタックルに入るのはすごいと思いました。
寒河江 どうしても試合だとお見合いになっちゃうんですよね。そこでバーンって自分からいけるのはほんとすごいですよね。ニッキーロッドは階級差があるからちょっとしょうがないですけどパスが強かったですね。シングルで倒れる時にもボディロックを組みながら倒して寝かせるのとかがうまかったですよね。それもでもマウントとられてもすぐキッピングでエスケープする岩本さんもすごかったです。ただの100キロでも強いのに、あんな世界トップの100キロみたいなのからエスケープするのはすごいですよね。
――続いて女性トーナメントの決勝がありました。初日は上を取ってたヘレナさんがこの試合は下から攻めていました。第1ラウンドからKガードから結構いいエントリーがありましたね。
寒河江 そうですね、バックサイド50/50まで入ってもうヒール取れるんじゃないかという展開でした。
――膝抜けないんじゃないかというくらいガッチリ形が作られてましたね。2ラウンド目は割と互角な様相でしたが、3ラウンド目でヘレナさんが一瞬の隙をついて一本を取りました。
寒河江 サラ選手も3ラウンド目結構動きが良くなってきたかなと思ったら足を抱えられちゃいましたね。抜こうとした時にちゃんとアオキロックの形を作っていて痛そうでした。
――アンクルロックは足をちゃんと抱えてれば相手の対応に合わせて形を変えられるのが強いですね。
寒河江 ヒールは外されると無くなっちゃいますからね。あとバックテイクとかのリスクも少ないです。ヒールはバックを合わされたりするけど、それも足首を抱えておくと止めやすいんで、最近はやっぱりアンクルしっかり抱える系の方が多い気がしますね。
――何となくレッグロッカーって一言で言うけど、結構色んなパターンいるじゃないですか。で、その中でおっしゃる通りアンクルを上手く使うっていうのが流行りというかトレンドなのかなっていう気はしますね。
続いて、Bチームとニューウェーブのチーム戦の決勝戦ですね。
ドリアンですねはまた同じようにイーサンを攻め倒してましたが、今回はイーサンが途中でクローズドに入れました。まずは動きを止めることが、大事なのかなという感じでした。
寒河江 止めるまではもう大変だったんですけどね。始まって10秒ぐらいでノースサウスに回り込んでて。で、一回パスしたら、また相手をスマザーして。昔一緒に練習してたはずなのに、とんでもない、何か恨みでもあるのかっていうぐらい削ってましたね。
クローズガード入った時にイーサンが足を抱えてる時に膝とんでもない角度に曲がってたんで、あれでちょっとたてなくなっていたのもあるかもしれないですね。
――最後はニッキー・ロッドとルーク・グリフィスの試合でした。
判定の結果は色々物議もありましたが、全体的に面白い大会だったと思います。
全体的な振り返り
寒河江 めっちゃ面白かったですけど、やっぱり前回のリーバイとかの試合が面白かったのがあって。全部が全部面白いっていうのはもちろん難しいと思うんですけど、ルールセットはやっぱ難しいところがあったと思います。
――クインテット方式は難しいですね。AIGAのような体重を合わせてやる方式もありますが、体重が違うからこそパトがグリフィスに挑むとか、オーウェン・ジョーンズがカイナンから我慢しきるとかそういう試合も生まれました。
一方で、とはいえパトも負けちゃったし、オーウェン・ジョーンズも我慢はしたけど、その我慢してるのを見てて楽しいかっていうと微妙ですよね。
寒河江 そうですね、岩本さんとニッキー・ロッドみたいな階級差があるからこそ出来た面もあるんですけど、女性トーナメントで結構アグレッシブで動きがある試合が多かったこともあって、見るだけで考えたら前回の仕切りが結構面白かったのかなっていうのもありました。
――寒河江さんから見て、何か技術的な流行りとか、最近の流れとか注目ポイントはありましたか?
寒河江 ダナハーさんのところは昔はインサイドから浮かしてサドルとか外掛けっていうのが多かったと思うんですけど、ヘレナさんがKガードを使ったり、アウトサイドのカードから攻めたりしている場面が多くて、昔はそういう感じでも今はそのアウトサイドガードから攻め入るのをダナハーもいいと思ってるのかな?と感じたました。
後はガードする時にリーバイとかもやってるようにラッソーをうまく使ってる選手が増えたなと思いました。足を回すだけだと左右に回られて止めれないので、そういう技術が大事になってきますね。
――自分はオーバーアンダー、ダブルアンダー、スマッシュなどが今また多く使われているのかなということを感じました。
寒河江 ガード側の技術の移り変わりもあると思うんですけど、それに合わせて
今抱えのパスなどがそこに当てはまっているとかもあるかもしれないですね。
――こういう大きい派手な大会があるっていうのは盛り上がっていいですね。いずれやっぱりこういう大会が日本とかでも開かれるようになるといいなと思うんですけど、日本でやるとしたら、オーストラリアとか、あと東南アジア、フィリピンとかベトナムも結構レスリング強かったりとかして、韓国も結構めちゃめちゃグラップリングが流行ってると思うんですよね。だから日本だけじゃなくて、そういうアジア中の選手を集めてやれたらいいですね。
寒河江 そうですね。そのためにも、まずはやっぱいろんな試合が増えてきて、みんな試合出て、競技人口が増えてくるといいですね。
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