最初に正直にお伝えしておきます。 私は何を隠そう、斎藤裕選手の大ファンです!
今回は完全に職権濫用(?)で、斎藤裕選手をこれでもかとベタ褒めする記事を書かせていただきます。
ちなみに筆者はMMA未経験、見る専(一度も人を殴ったことはないです!!)の、グラップリングを嗜むおばさんとしての意見です。
また、技術論を語れるほどテクニックに明るいわけではありません。 それでも「あのトップキープ、スパーリングでやりてぇ……!」と思う部分がてんこ盛りでしたので、愛も含めて語らせてください!
きっかけは、試合前後の舞台裏を描くドキュメンタリーRIZIN CONFESSIONS(ライコン)を観たことでした。
選手たちの背負う覚悟や葛藤、そしてあの試合に懸ける熱量に思いっきり感化されてしまい、これはグラップリングを嗜む者として書かずにはいられない!と筆を執ることを決意した次第です。
そのため、本稿はかなり斎藤裕選手贔屓な内容になっておりますことを、あらかじめご容赦くださいw
さて、今回スポットを当てるのは、斎藤裕 vs YA-MAN戦で見せた斎藤選手の「ポジションキープ」です。
MMAの試合ではありますが、あの攻防にはノーギ・グラップリングや道着の柔術で「上が取れてもすぐ逃げられてしまう」「プレッシャーが軽くて相手をコントロールできない」と悩む私たちが学べるポイントがギッシリ詰まっていました。
ピュアグラップラー目線で「盗みたい」斎藤裕流・トップコントロールのポイントを3つに絞って解説します!
ちなみに試合はこちらです!
殴らない私たちが、なぜこの試合を教科書にしていいのか
ピュアグラップラーにとって、MMAのグラウンドは翻訳が必要です。パウンドがある。スタンドに戻されると打たれる。ケージがある。
だから「押さえ込む」ことの価値が、私たちのルールより高く見えます。
それでも、翻訳したあとに残る核は同じです。
良い場所を取って、そこから降りない。
相手が動いたら、その力で次ポジションへ入る。
一本が見えても、場所を捨ててまで取りにいかない。
道着の有無も、ポイントの有無も、打撃の有無も、この三行までは消せません。斎藤選手があの試合でやっていたのは、まさにこれでした。
見る専の私がドームで鳥肌が立ったのも、ライコンや試合動画の振り返りで二度・三度と胸が熱くなったのも、派手な一本があったからではありません。
自分の柔術、自分のグラップリングで「できていないこと」が、プロのリングで15分間、正確に繰り返されていたからです。
ハーフガードの上は、未完成のポジションではない
初中級のピュアグラップラーがやりがちな誤解があります。ハーフガードの上は、マウントやサイドの手前、まだ仕事が終わっていない場所だ、という誤解です。
足が残っている。パスしていない。ポイントも入らない。だから焦って膝を抜きにいく。抜けなければ、無理にサブミッションを探しにいく。相手にフレームを作られ、下から膝を立てられ、いつの間にかガードをやり直されている。
斎藤選手のハーフは、途中経過ではありませんでした。次のポジションへの起点でした。
テイクダウンの着地が、毎回ほぼ同じです。YA-MAN選手の右足を超えたハーフ。そこに落ちて、上体を寝かせて固める。足より先に、胸と肩を潰す。顔を押されて距離を作らせない。
これ、ピュアグラップリングでもそのまま使えます。むしろ、道着がないノーギほど効きます。袖で止められないぶん、残るのは密着と角度だけだからです。
スパーでパスできないと悩んでいる人は、足を見る前に自分の胸を見てください。相手の肘が立っていないか。自分の体重が腰ではなく、相手の上体に乗っているか。斎藤選手は、足が残っていても試合を進めていました。上体が死んでいれば、下の人は返せない、立てない、次のガードを作れない。ハーフは未完成ではなく、上体を殺すための完成形になり得ます。
明日のマットで試すなら、こうです!
テイクダウンやパスの途中で「とりあえずハーフ」になった瞬間、抜きを急がない。10秒だけ、上体を潰す。それができてから膝を動かす。
それだけで、いつものパスが少し楽になります。
相手のエスケープは、邪魔ではなく次のポジションへのキッカケ
YA-MAN選手は下で何もしていなかったわけではありません。顔を押す。ブリッジする。立ち上がろうとする。グラップラーの目で見れば、全部正しい初動です。
下の人が力を使って動く。初中級のトップは、ここで必死に止めにいきます。体重を預ける。腕を張る。相手の動きを事故として処理しようとする。
斎藤選手は違いました。相手が動いたら、その動きに乗って次のポジションへ入る。
- 距離を作りたい → 密着を戻される
- ブリッジで返したい → その回転でバックに入られる
- 立ち上がりたい → スペースを消されて、またマットに戻される
1R終盤のバックテイクが、いちばんわかりやすい見本です。下のブリッジは、返すための力です。上の上手い人にとっては、バックへ運んでもらうための力でもあります。
ピュアグラップラーのスパーで、これが一番失敗の原因になりやすいところです。パスを止められた瞬間に失敗したと思うことが多いでしょう。下の人が暴れた瞬間に崩された〜!となりますよね。本当は、そこからが仕事です。
相手が力を出した方向を、自分の移動に使う。止めない。乗っかる。
柔術でもグラップリングでも、強いトップは同じことをしています。斎藤選手はそれを、YA-MANという破壊力のある相手の上で、15分間やめませんでした。べた褒めします。あれは才能の一発ではなく、場所の設計です。
一本を取りにいって、場所を捨てない
見る専として一番ドキドキしたのは、バックチョークが極まりかけた時間です。いけーーー!と叫びました。心の中ではありませんw 格ヲタなので。
でも斎藤選手は、極まり切らなければトップへ戻る。バックを失いそうなら無理に追わず、またハーフの上へ戻る。試合を見直すと、その判断の冷たさに、当日以上に感動しました。興奮で見えていなかったものが、そこにありました。
初心者グラップラーほど、この判断を軽く見がちです。なぜなら、私たちの試合では一本が正義だからです。バックを取ったら絞める。マウントを取ったらアームバーを探しにいく。下の人がスクランブルしてきたら、一緒に転がってでもサブミッションを追う。
その気持ちはわかります。わかりますが、場所を捨てた一本狙いは、スパーでも試合でも、一番高い買い物です。
特にノーギはそうです。
道着がないと、一度良い場所を失ったあとのリカバリーがキツい。袖を掴んで耐える、という保険がありません。
だから「今、自分は勝っている場所にいるか」を問い続けること自体が、攻めです。
斎藤選手は、勝てる場所を知っていました。そして、そこから降りませんでした。
MMAだから必要だった、で終わらせないでほしいです。
ピュアグラップリングでも、勝っている場所に居続ける人は強い。一本を急いで自分からガードの中に戻ってくる人は、いつまでも同じところで止まります。
殴らない私たちが、明日持っていくもの
打撃は真似しなくていいです。というか無理だし殴ったら即刻退場ですw
ケージの攻防も、この記事の主題ではありません。
参考にすべきは、寝技のポイントだけです。
1. ハーフガードの上では、足より上体を先に潰す
パスできない日は、抜きの技術が足りないのではなく、相手のフレームが生きていることが多いです。
胸を乗せる。肘を畳む。顔の距離を消す。その10秒を、空白だと思わない。
2. 相手が力を使ったら、止めずに乗っかる
ブリッジ、ショルダーエスケープ、立ち上がり。全部邪魔なのではなく、次のポジションへのキッカケとして見る。
自分が潰されている側なら、力の出し方を雑にしない。上手いトップは、その力を待っています。
3. 一本の手前で、場所を捨てない
バックもマウントも、サブミッションのための通過点ではありません。
そこ自体が勝ちです。極まりそうで極まらないなら、戻る。また同じ場所を取りにいく。斎藤選手はそれを徹底していました。だから美しいのです。
私は人を殴ったことがありませんしリングにも上がったことがありません。
それでも、あのポジションキープは、自分のマットの話として見えました。
良い場所に居続ける強さは、止まっている強さではない。
降りない強さです。
京セラドームで一度、ライコンでもう一度、私は同じ15分に感動しました。ピュアグラップラーの皆さんが次のスパーで思い出すなら、技の名前より先に、これだけで十分です。
今、自分は勝っている場所にいるか。いるなら降りてはいけません。
まとめ
冒頭でお話しした通り、私は斎藤裕選手の大ファンです。
そして1人のグラップリングおばさんとして、あの粘り強く精密なコントロールを見るたびに「こんな強いプレッシャーをマットの上でかけてみたい……!」とワクワクしてしまいます。
一見すると静かに抑え込んでいるだけに見えるシーンでも、そこにはフレームの潰し合い・重心の移動・ミリ単位の引き締めといった高度なグラップリングの攻防が凝縮されていました。
いつもスパーリングでトップからの抑え込みに苦戦している方、相手にすぐエビで逃げられてしまう方は、ぜひもう一度ライコンや試合映像を見返してみてください。
斎藤裕選手の隙間の消し方と骨盤の殺し方には、私たちの日常のグラップリングを劇的に変えてくれるヒントが詰まっていますよ!




